現代の企業を取り巻く経営環境は、グローバル化、デジタル化、規制強化といった大きな変化に直面しています。
これらの変化は新たな成長機会をもたらす一方で、コンプライアンス違反や会計不正、システム障害などのリスクを顕在化させています。
こうした状況において、内部監査は企業が持続的に発展していくために不可欠な仕組みとして注目されています。
本記事では、内部監査の定義や種類、外部監査・監査役監査との違い、目的や確認項目、そして実際の流れまでを体系的に解説します。
この記事を読むことで、読者の皆さまは「内部監査とは何か」を基礎から理解し、企業における内部監査の役割や重要性を把握できるようになります。
内部監査とは?
内部監査とは、企業内部に設置された監査部門または内部監査人が、組織の業務活動や内部統制の有効性を独立した立場で検証・評価し、改善を促すプロセスを指します。
単なる不正の摘発や会計の点検にとどまらず、経営効率の改善やリスクマネジメントの強化にも寄与する活動です。
内部監査は「経営の目」として機能し、経営陣や取締役会に対して客観的な意見や提言を行うことで、企業統治(コーポレートガバナンス)を支える重要な役割を果たします。
内部監査の種類
内部監査は対象や目的によっていくつかに分類されます。
代表的なものは以下の通りです。
- 部門監査 営業部門、製造部門、人事部門など、特定の組織単位を対象とした監査。業務の効率性や法令遵守を確認します。
- テーマ別監査 情報セキュリティ、ハラスメント防止、環境対策など、特定テーマに焦点を当てた監査。
- 経営監査 経営戦略や経営資源の活用状況を点検し、企業全体の方向性に即した改善を提案する監査。
外部監査との違い
内部監査と外部監査は同じ「監査」という言葉を用いるものの、その性格や役割には大きな違いがあります。
実施主体
まず、実施主体に違いがあります。内部監査は、企業内部に設置された監査部門や内部監査人によって行われます。
一方、外部監査は監査法人や公認会計士といった外部の独立した専門家が担います。
目的
次に、目的が異なります。内部監査の主な目的は、業務改善や内部統制の有効性を確認し、経営を支援することです。
これに対し、外部監査は財務諸表が適正に作成されているかを保証し、投資家や債権者といった外部の利害関係者に信頼性を提供することを目的としています。
視点
視点についても違いが見られます。
内部監査は経営陣に対して助言やサポートを行う立場にあり、組織の内部から改善を促す性格を持ちます。
他方、外部監査は企業の外部の利害関係者に対して保証を行う立場から、独立性と客観性が重視されます。
実施頻度
実施頻度にも差があります。
内部監査は定期的かつ継続的に行われ、必要に応じて随時監査が実施されることもあります。
これに対し、外部監査は通常、決算期ごとに年1回実施されるのが一般的です。
監査の範囲
最後に、監査の範囲が異なります。
内部監査は会計、業務、コンプライアンス、システムなど企業活動全般を対象とするのに対し、外部監査は主として財務情報に限定されます。
このように、外部監査が財務諸表の信頼性を保証する役割を担うのに対し、内部監査はより広範な領域を対象とし、経営に密着して改善機能を果たす点で大きな特徴を持っています。
監査役監査との違い
内部監査と監査役監査は、いずれも「監査」という機能を担いますが、その立場や役割には明確な違いがあります。
実施主体
まず、実施主体が異なります。
内部監査は企業内部に設置された内部監査部門や内部監査人が担いますが、監査役監査は監査役、あるいは監査役会によって実施されます。
目的
次に、目的の違いが挙げられます。
内部監査は主として内部統制の有効性を確認し、業務改善を促すことを目的としています。
一方で、監査役監査は取締役による職務執行が法令や定款に照らして適法に行われているかを監督することを主眼としています。
対象範囲
また、対象範囲にも差があります。
内部監査は業務プロセス、会計処理、コンプライアンス体制など幅広い領域を対象にしますが、監査役監査は取締役の意思決定や行為そのものを監視対象としています。
立場の違い
さらに、立場の違いも重要です。
内部監査は経営陣に助言する「内部的な監査機能」であるのに対し、監査役監査は株主の立場から取締役を監督する「外部的な監視機能」としての性格を持ちます。
報告先
最後に、報告先も異なります。
内部監査は主に経営陣や取締役会へ報告を行いますが、監査役監査は株主総会や取締役会へ報告する立場にあります。
総じて、内部監査が経営をサポートする役割を果たすのに対し、監査役監査は経営を監視する役割を担っている点が、両者の最も大きな相違点であるといえます。
内部監査の目的
内部監査の実施目的は多面的です。
主なものを以下に示します。
業務の有効性・効率性の向上
業務プロセスを検証することで、無駄な手続きや非効率なフローを改善し、業務効率を高めます。
不祥事の防止
不正会計やコンプライアンス違反、ハラスメントといった不祥事を未然に防止する役割を担います。
監査を通じて内部牽制機能が強化され、リスク低減につながります。
経営目的を達成するための改善策の助言
監査を通じて経営目標に対する進捗を評価し、必要な改善策を提案します。
これにより、経営戦略と現場の実務の乖離を縮小できます。
内部監査の確認項目
内部監査では、企業活動のさまざまな領域を対象にチェックを行います。
代表的な確認項目は以下の通りです。
- 会計監査 財務情報の正確性、会計処理の適法性を確認
- 業務監査 業務プロセスの効率性や適正性を点検
- デューデリジェンス監査 M&AやIPO準備の際に実施されるリスク調査
- システムセキュリティ監査 情報セキュリティや個人情報保護体制を確認
- コンプライアンス監査 法令や社内規程の遵守状況を検証
- ISO監査 ISO認証取得企業における運用状況を確認
内部監査の流れ
内部監査は計画からフォローアップまで、一連のプロセスを経て実施されます。
監査計画の策定
年間監査計画を立案し、監査対象、範囲、方法を明確化します。
予備調査
対象部門の業務フローや過去の監査結果を事前に確認します。
本監査の実施
現場ヒアリング、書類確認、データ分析などを通じて、業務の実態を把握します。
監査調査・監査報告書の作成
調査結果を整理し、問題点や改善提案をまとめた監査報告書を作成します。
フォローアップ
改善措置が実行されているかを確認し、未対応の事項については追加の指導を行います。
まとめ
内部監査は、企業が安定的に成長し、社会的な信頼を得るために欠かせない仕組みです。
単に財務や法令順守をチェックするだけでなく、業務を効率化し、不祥事を防ぎ、経営改善のヒントを提供するなど、幅広い役割を担っています。
外部監査や監査役監査と違い、内部監査は会社の中から自ら改善を進めていく仕組みであり、今の経営においては欠かせない戦略的な存在です。
企業にとって内部監査は、義務だからやるものではなく、企業価値を伸ばすための武器であることを理解し、前向きに活用することが求められているのではないでしょうか。
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監修者海蔵 親一
社会保険労務士・行政書士・社会福祉士
「経営者と同じ目線で考え、行動すること」をモットーに、現場に即した実効性のある支援を行っている。