IPOを目指す企業にとって、財務や法務のリスク管理と同じくらい重要なのが内部監査体制の構築です。
上場審査では、持続的な成長を支えられる仕組みがあるかどうかが問われ、その一環として内部監査が機能しているかがチェックされます。
特に最近は、コーポレートガバナンスや内部統制の重要性が増しており、内部監査は単なる形式的な作業ではなく、企業価値を向上させ、投資家の信頼を得るための重要な機能として位置づけられています。
本稿では、IPO準備における内部監査の意義と必要性、具体的なスケジュールやチェックリスト、さらには監査の種類や進め方について体系的に解説いたします。
この記事を読むことで、IPO準備段階で内部監査をどのように設計・運用すべきか、その全体像を理解いただけます。
IPO準備と内部監査
IPOの審査では、財務データや法令順守だけでなく、社内の統制体制がどれだけ整っているかもチェックされます。
内部監査は、その統制がしっかり働いているかを確認し、不備があれば改善を後押しする役割を果たします。
その効果としては、以下のような点が挙げられます。
- 上場審査に対応できる 求められる内部統制の基準をクリアできる。
- 経営の透明性を高める 取締役会などに客観的な情報を提供し、ガバナンスを強められる。
- リスクを防止できる 不正や違反を事前に抑えられる。
- 業務を効率化できる 業務の流れを点検して無駄を減らせる。
監査対象
IPO準備段階で実施される内部監査は多岐にわたり、主に以下の領域に分類されます。
- 業務監査
業務プロセスの適正性や効率性を検証し、不正防止や改善提案を行います。 - 会計監査
財務諸表の正確性、会計処理の適法性を確認します。IPOでは監査法人の監査に加え、内部監査での事前点検が不可欠です。 - コンプライアンス監査
労働法、会社法、金融商品取引法など、各種法令や社内規程が遵守されているかを確認します。 - システムセキュリティ監査
情報システムのアクセス管理、サイバーセキュリティ対策、個人情報保護体制などを点検します。 - ISO監査
ISO認証(品質、環境、情報セキュリティ等)を取得・維持している場合、その運用状況を確認します。
内部監査の開始時期に関する考え方
IPO準備は通常3〜5年の長期計画で進められますが、内部監査は遅くとも申請の1年前には着手しておく必要があります。
内部監査で指摘された不備を是正するには相応の時間がかかるため、可能であればN-3期(上場3年前)やN-2期から開始することが望ましいといえます。
N-4期からの着手でも早すぎることはなく、早期に取り組むほど審査対応が円滑になります。
IPOにおける内部監査のスケジュール
フェーズ1 基本方針と計画策定
IPO準備にあたり、まずは内部監査の基本方針を策定します。監査対象範囲、実施体制、年間スケジュールを定め、取締役会で承認を得ることが重要です。
フェーズ2 内部統制の評価と整備
財務報告の信頼性確保を目的として、業務フローを文書化し、統制活動の有効性を評価します。
特に、職務分掌、承認手続き、IT統制などを重点的に点検し、改善策を講じます。
フェーズ3 内部監査の実施と報告
計画に基づき、実地監査を実施します。監査報告書には、指摘事項、改善勧告、対応期限を明記し、取締役会や監査役会に報告します。
IPO準備企業にとっては、改善勧告への対応実績が審査上の評価に直結します。
フェーズ4 フォローアップと改善
監査で指摘された事項について、改善の進捗をフォローアップします。
未改善のまま残存するリスクは上場審査において重大なマイナス評価となるため、是正の完了まで継続的にモニタリングを行うことが求められます。
IPOにおける内部監査チェックリスト
業務監査
- 業務プロセスのマニュアル整備と遵守状況
- 職務分掌・承認ルールの明確化
- 業務の効率性と改善余地の検討
- 不正防止の内部牽制機能の有効性
会計監査
- 財務諸表の作成プロセスの適正性
- 会計方針の一貫性と開示の適正性
- 売上計上基準や引当金計上の妥当性
- 監査法人対応のための資料整備状況
コンプライアンス監査
- 労働基準法、会社法、金融商品取引法の遵守状況
- 内部通報制度の設置と運用
- 契約書管理体制の整備状況
- ハラスメント防止体制の整備
システムセキュリティ監査
- アクセス権限管理の適正性
- ログ管理・監視体制の有効性
- 個人情報保護法対応の実施状況
- サイバー攻撃への対策体制
ISO監査
- ISO認証(品質・環境・情報セキュリティ)の運用状況
- 内部監査および外部審査への対応履歴
- 文書管理・教育訓練の実施状況
- 是正処置・予防処置の有効性
まとめ
IPO準備における内部監査は、形式的なチェックにとどまらず、企業のガバナンス強化と信頼性確保の根幹をなす重要な機能です。
業務、会計、コンプライアンス、システム、ISOといった多面的な領域を対象に、計画的かつ継続的に監査を実施し、改善を積み重ねることで、上場審査をスムーズに乗り越えることが可能となります。
内部監査を「IPO審査のための準備作業」としてではなく、「上場後も企業価値を高め続けるための仕組み」として捉えることこそが、持続的成長につながるのです。
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監修者海蔵 親一
社会保険労務士・行政書士・社会福祉士
「経営者と同じ目線で考え、行動すること」をモットーに、現場に即した実効性のある支援を行っている。