1.同一労働同一賃金の施行5年後見直しについて
厚生労働省は、 5年後見直し規定等に令和7年2月5日、同一労働同一賃金制度の見直しに向けた議論を開始しました。同一労働同一賃金は、平成30年働き方改革関連法により、同一労働同一賃金に係る規定が令和2年4月1日から施行されました。 (パートタイム・有期雇用労働法の中小企業への適用は令和3年4月1日) ただ、法施行後の現状において様々な課題等があり、見直しが必要なのが現状です。
2.法施行後の現状
①短時間、有期雇用労働者数は増加傾向にあり、基幹的役割を担う者も存在する。
②短時間労働者の給与は一般労働者の約6割、有期雇用労働者は約7割。
③労働者のニーズや事情に応じた働き方である一方、非自発的に選択する者も存在する。
特に、①においては今後も増加傾向は変わらないと考えられます。
3.同一労働同一賃金に対する課題
①待遇が働きや貢献に見合っていない場合があるため、通常の労働者との均等均衡待遇の一層の確保が求められる。
②労働条件が不明確になり易く、待遇差の内容等が不明なため、短時間・有期雇用労働者の納得性を向上させる必要がある。
③不本意非正規雇用労働者を含め、通常の労働者への転換希望者への機会付与、キャリアアップが必要である。
特に基幹的な役割を担う者もにおいては、その者の貢献に見合った適切な評価と説明がなされない場合、会社に対する不信感が高まり、職場全体の労働環境にも悪影響を及ぼす恐れがありす。
4.同一労働同一賃金実現に向けての具体的な施策
同一労働同一賃金の実現に向けて、短時間・有期雇用労働者に対しては以下のような施策を検討することが必要です。
①賃金・手当の格差是正
基本給は、勿論のこと通勤手当・住宅手当・役職手当などの各種手当も、業務内容や貢献度に応じて公平に設定する。
②キャリアアップの機会提供
正社員登用制度の整備構築を行なう。また、スキルアップ研修や資格取得支援制度の充実を図る。
③評価制度の透明化
労働者自身のキャリア形成や給与の見通しが持てるような仕組みの導入。評価制度自体は、業務内容・成果に基づいた明確公正な評価基準を設定し、公平な処遇を行なう。
④労働条件・福利厚生の均等化
制度の利用機会を正社員と同等に行なう。特に、有給休暇、育児・介護休業制度、福利厚生サービスにおいては公平な提供が必要。
⑤企業の意識改革と法規制の強化
企業が「均等待遇」「均衡待遇」の原則を理解し、適切な制度設計を構築することが必要です。
上記における施策は一度に全てを整える事は、現実問題不可能と考えられます。その為、従来の正社員と非正規社員との概念からの意識改革を図りつつ、待遇差については労働条件の明確化と待遇差の合理的な説明を徹底することが、同一労働同一賃金の実現において最も重要な課題であるといえるでしょう。
同一労働同一賃金に関する情報が知りたい方は、以下を参考にしてみてください。
同一労働同一賃金の施行5年後見直しについて https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001390408.pdf
働き方改革関連法による改正のポイント(同一労働同一賃金) https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001390423.pdf
不合理な待遇差に関する裁判所における判断 https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001390427.pdf