2025年、日本社会は大きな転換期を迎えています。 近年、社会課題として「2025年問題」「2025年の崖」が注目されてきましたが、さらに長期的な視点から「2040年問題」が提起されています。
1,2025年問題、2025年の崖、2040年問題
「2025年問題」とは、2025年に団塊の世代と呼ばれる約800万人全員が75歳以上の後期高齢者になることで、年金や医療、介護にかかる費用が大きく増え、働く人が不足するという問題が深刻化する問題です。
「2040年問題」は、さらに高齢化が進み、経済や社会基盤が危機に陥る可能性を示しており、働きながら家族の介護を行うビジネスケアラーが急増することが予想されています。
「2025年の崖」とは、ITシステムの老朽化によるセキュリティリスクや運用コストの増大、DX化・新たな技術への対応の遅れによる競争力低下により、経済的な損失が生じるという問題です。
労務において既に課題とし提起されている下記への対応が、事業継続及び拡大において喫緊の課題となります。
- 多様な働き方の実現
テレワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方を導入することで、離職率の低下と新たな人材の獲得 - 長時間労働の抑制
RPAなどのツールを活用し、業務効率化を図り、働き方改革の推進、有給休暇の取得促進によって社員の健康維持を図る - DXの推進
コスト削減や業務効率化だけでなく、商品・サービスの付加価値向上を目指す
2,健康経営(ウェルネスマネジメント)
働き方改革の1つである長時間労働削減は、残業代未払いに対する遡及支払いなどの報道を目にすることが増え、未払いに対するリスク認識の高まりとともに、36協定限度内に残業を収めるよう対策をされている企業も多くなってきました。
このような状況下で、従業員の健康増進を経営戦略として位置づける「健康経営」が注目されています。
健康経営は、従業員の健康状態の改善だけでなく、生産性向上、離職率低下、人材確保など、企業全体の活性化に繋がるもので、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。
※経済産業省HP
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html
健康経営がもたらすメリットには、下記があります。
- 生産性向上: 従業員の健康状態が向上することで、意欲や集中力が高まり、生産性向上に寄与
- 離職率低下: 健康に関する取り組みは、従業員の満足度向上につながり、離職率の低下に。
- 人材確保の強化: 健康経営に取り組む企業に対するプラスイメージにより優秀な人材の確保へ。
- 医療費の削減: 生活習慣病などの予防により、医療費の削減
- 企業イメージ向上: 社会貢献度の高い企業として評価され、企業イメージの向上
2025年問題では、労働力不足が深刻化する一方で、高齢者の就業意欲は年々高まっています。
健康経営は、従業員の健康寿命を延ばし、高齢者の就業を促進することで、労働力不足の解消に貢献することが可能になります。
健康経営の具体的な取り組み例としては、下記が考えられます。
- 健康診断の充実: 特定保健指導の強化、結果説明会の実施など
- 健康教育の多様化: ウェルネスプログラムの導入、健康セミナーの開催など
- 健康相談窓口の設置: 従業員が気軽に相談できる窓口の設置
- 健康増進のための環境整備: オフィス環境の改善、運動器具の設置など
- 従業員のエンゲージメント向上: 健康イベントの実施、健康経営に関する社内広報
3,ウェルビーイング経営
健康経営と同様に注目されているのが、「ウェルビーイング経営」です。
ウェルビーイング経営は、従業員の健康だけでなく、仕事に対する満足度、人間関係、成長機会など、より広範な幸福感を高めることを目的としています。
どちらも企業の持続的な成長を支える重要な経営戦略であり、従業員の健康と幸福を重視し、働きがいのある職場づくりを進めることで、企業の競争力強化と、従業員は高いパフォーマンスを発揮することを可能にします。