1,なぜ義務化になったのか
近年、猛暑日(最高気温が35度以上)の数が急増職場での熱中症による死亡災害が後を絶たず、とりわけ、建設業、製造業、農林水産業、物流業などの高温環境下で働く労働者にとって、熱中症は生命の危機に直結する重大な労働災害となっています。厚生労働省もその深刻な自体を懸念しており、その為、企業に対して「任意」だった職場における熱中症対策を罰則付きで強化されるようになりました。
2,事業者に義務づけられる具体的な熱中症対策
①暑さ指数による管理の徹底
一定以上になった場合は作業制限や休憩を義務づけるようになりました。
②水分・塩分補給の確保
塩飴、冷たい飲料水などを、職場に常備することが求められるようになります。
③作業中の定期的な休憩時間の確保
気温や湿度に応じて、作業ごとに休憩時間の目安が設けられるようになりますので、職場内での弾力的運用が必要になってきます。
④教育と周知の徹底
従業員に対しての熱中症の知識と対策方法を共有することが必要になります。例えば、研修の実施などが挙げられます。
⑤記録と報告の義務
熱中症の発生状況や対策の実施記録を一定期間保管する事を義務づけられます。
3,企業と労働者の対応
制度の実効性を、より確実に定着させていくためには、企業と労働者双方の積極的な行動が不可欠となってきます。企業は計画的な対策の実施と記録保管に加え、熱中症の予兆を見逃さないマネジメント体制の構築だけではなく、企業内マニュアル作りなど熱中症対策の積極的な予防が求められます。また、一方で、労働者にも自分自身のの体調管理、体調不良時の申告、適切な水分補給など、セルフケアの重要性が今以上に必要になります。これらにより、職場全体での「熱中症に強い文化」が醸成がされていくと思われます。
4,熱中症対策の今後の課題と展望
熱中症対策の義務化は、すべての業種・企業規模に一律で適用するには課題も大きく残ると思われます。中小企業では対策に伴うコストや人員面での制約が大きくなり、対策の実施が不十分ななるのではないかという懸念もあります。政府は、対策に伴う中小企業の財政支援などの方策が必要になるのではないのでしょうか。企業側も、今後、AI等の技術を活用したリアルタイム環境モニタリング等による個人の健康管理なども導入していくことを考慮する必要もあります。
熱中症は、最悪の場合命に関わる危険な症状です。企業側が安全な労働環境を整えることはもちろん、私たち一人ひとりも、意識を高めていくことが求められているのではないでしょうか。