企業経営において、労務管理は単なる事務作業ではなく、コンプライアンスや企業価値に直結する重要な業務です。
特にIPOやM&Aを目指す企業にとって、労務監査は外部評価の際に非常に重要なチェックポイントとなります。
この記事では、労務監査の定義や目的、流れ、チェック項目、そして受けるメリットまでをわかりやすく解説します。
読み終えることで、企業が労務監査を活用してリスクを低減し、労務管理体制を適正化する方法を理解できるようになります。
労務監査とは?
労務監査とは、企業の人事・労務管理の状況を専門家や内部担当者がチェックし、法令遵守や運用の適正性を評価するプロセスを指します。
具体的には、労働基準法や労働安全衛生法、社会保険関連法などに基づき、勤怠管理、給与計算、労働契約、就業規則の運用状況などを総合的に点検します。
労務監査は単なる書類チェックにとどまらず、従業員へのヒアリングや現場確認を通じて、潜在的なリスクを発見することも重要です。
特にIPOやM&Aの準備企業においては、外部監査法人や買収先企業のチェックに耐えうる体制を整備するために必要不可欠なプロセスとなります。
労務監査の目的
労務監査の目的は多岐にわたります。
主な目的を整理すると以下の通りです。
1. 人事・労務管理体制の適正化と効率化
管理業務の手順や運用フローを整理することで、人的コストやミスの削減につながります。
2. 労務関連法令違反のリスクを低減・防止する
未払い残業代や不適切な労働時間管理など、法令違反リスクを早期に発見し、是正措置を講じることで企業の法的リスクを低減します。
3. 従業員の労働環境を改善し、エンゲージメントを高める
働きやすい環境を整備することで、従業員の満足度や生産性向上につなげます。
4. IPOやM&Aにおけるリスク評価と対策
上場審査や買収先のデューデリジェンスにおいて、労務管理の不備は減点対象や契約条件の見直しにつながります。
事前の労務監査は、こうしたリスクを未然に防ぐ手段となります。
5. 企業価値の向上と持続的な成長に貢献する
コンプライアンス遵守は、投資家や金融機関からの評価向上につながり、企業価値を高めます。
社労士等の専門家による労務監査が求められる理由
社労士や弁護士などの専門家が労務監査に関与する理由は、法令遵守のチェックやリスクの評価に高度な専門知識が必要だからです。
内部担当者だけでは見落としや判断の偏りが発生することがあります。
専門家の知見により、次のようなメリットがあります。
1. 法改正や判例に基づく最新のリスク評価が可能
2. 内部では把握しにくい潜在リスクの発見
3. 外部監査や投資家への説明に耐えうる客観性の担保
内部監査の具体的な流れとチェック項目
労務監査は段階的に実施されます。
一般的な流れとチェックポイントを整理します。
実施準備
1. 監査計画の策定
対象範囲、チェック方法、スケジュールを明確化します。
2. 資料収集
就業規則、労働契約書、給与明細、勤怠記録などを準備します。
3. ヒアリング対象の選定
管理職や従業員代表など、必要な範囲でヒアリング対象を決定します。
労務監査
1. 書類・システムの確認
就業規則の内容と実際の運用が一致しているかをチェックします。
2. 勤怠・給与データの分析
法定労働時間や残業代の計算方法、社会保険料の控除が正しいか確認します。
3. 従業員へのヒアリング
現場の実態を確認し、書類だけではわからない問題点を抽出します。
労務監査報告
- 監査結果の整理
リスクの有無、改善点、優先度を明確化します。
- 是正措置の提案
短期・中期・長期の対応策を具体的に示します。
- 報告書作成と関係者への共有
経営層や人事部門への報告により、改善アクションを開始します。
主なチェック項目
- 労働契約書・就業規則の整合性
- 勤怠管理の正確性(打刻漏れや残業申請の運用)
- 残業代・割増賃金の計算と支払い状況
- 社会保険・雇用保険の加入・控除状況
- 従業員への労働条件の周知状況
- 安全衛生管理・ハラスメント対応体制
労務監査を受けるメリット
労務監査を受けるメリットについていくつかご紹介します。
リスクマネジメントの強化
法令違反や未払い賃金、労働環境上の問題を早期に発見できるため、企業の法的リスクを低減できます。
IPO・M&Aの円滑化
監査済みの労務体制は、IPO審査やM&Aのデューデリジェンスで高く評価され、手続きの円滑化につながります。
人事・労務管理体制の最適化
業務フローや手順を整理することで、管理コストの削減や運用効率の向上が期待できます。
従業員の満足度向上と定着率アップ
公正な労務管理や透明性のある給与・勤務管理は、従業員の信頼感や働きやすさの向上につながり、離職率の低下に寄与します。
まとめ
労務監査は、単なる形式的なチェックではなく、企業の法令遵守、労務管理体制の適正化、従業員満足度向上、IPOやM&Aのリスク回避まで幅広いメリットをもたらします。
社労士や弁護士などの専門家と連携して内部監査を定期的に実施することで、企業は潜在リスクを可視化し、早期に是正措置を講じることができます。
結果として、労務監査を受けることで企業の持続的な成長と企業価値向上に直結する体制が整い、IPOやM&Aのデューデリジェンス等、重要な局面でも信頼性の高い企業として評価されるのです。
人事労務に関するお悩みサポートします!
- 社会保険の手続き、いつも手間取る…
- 勤怠管理にムダが多い気がする
- 助成金って、うちも使える?
- 労務管理が属人化してて心配
一般的な労務業務だけでなく、
IPO支援労務コンサルティング・M&A・労務・人事DD等の
幅広い業務に全国で対応可能です。
365日/24時間受付

監修者海蔵 親一
社会保険労務士・行政書士・社会福祉士
「経営者と同じ目線で考え、行動すること」をモットーに、現場に即した実効性のある支援を行っている。